ワンボックスカーとは?ミニバンやステーションワゴンとは違うの?

ワンボックスの「ボックス」とは、車における

  1. エンジン室
  2. 客室
  3. 荷物室

の3つの空間を指します。そして、その3つの空間が1つの箱の中に収まっているものを1つの箱という意味でワンボックスと呼びます。

これは日本発祥の用語で、元々は車のマーケティングに使おうと考え出されたもの。車の販売市場で広く使われ始めたことから、私たちの生活にもワンボックスカーという言葉が浸透していったのです。

ちなみに日本自動車工業会では、こうしたワンボックスカーを、キャブオーバー型という名のボディスタイルとして統計に加えています。

1960年代のワンボックスカーの歴史

ワンボックスカーの登場は1960年代から盛んになります。

ワンボックス形態の車として最初に登場したのは、1960年に商用車として登場した日野のコンマース。縦置き型のエンジンを前軸に搭載した前輪駆動の車で、従来の短いボンネットを持つスタイルになっていました。

本来であればセミキャブオーバーに分類される車種ですが、前軸を運転席下まで下げることによって、エンジン部分の上に運転席を配置するキャブオーバー方式を実現したため、キャブオーバー方式として分類されています。

しかしコンマースは前輪駆動という特性上、重量のある荷物を運ぶには不向きでした。また、後輪駆動方式と比較しても、技術的不備が目立って故障が頻発。こうした要因による販売不振のために、発売から2年ほどで生産終了となりました。

翌年の1961年に登場したのはスバルサンバーです。スバルというメーカーの名は、現在でもコマーシャル等でよく耳にしますよね。このスバル・サンバーは前年にデビューした日野・コンマースの販売不振とは対照的に大きな成功を収めました。特に6代目のモデルは、荷台の下にエンジンを搭載することによって、登り坂などでも車体がしっかり安定したり、軽商用車としては珍しいスーパーチャージャーが搭載されていてn卓越した走行性能から「農道のポルシェ」との異名がつくほどの人気を博しました。

日野コンマースとは異なり、後輪の中心よりも後ろに位置するリアオーバー部分に横置きエンジンを搭載するリアエンジン方式を採用しています。

ちなみに、このスバル・サンバーは軽自動車では初のキャブオーバースタイルの車種として知られているんですよ。

1960年代後半に登場したワンボックス

1966年には、同じくリアエンジン方式を採用したマツダボンゴが、キャブオーバースタイルで登場します。3列シート8人乗りという大容量の客室を収めるこのボンゴは瞬く間に人気を博し、まだワンボックスカーという呼称が存在していなかった当時の国内において、ワンボックスカー全体がボンゴ型車として呼ばれるほど代表的な存在となりました。

全メーカーが手掛けるようになった

そして1967年にはトヨタミニエースが。1968年には三菱デリカが。1969年にはダットサンサニーキャブ、日産チェリーキャブが。いずれもキャブオーバースタイルとしてデビューしました。

また、デリカにおける「運転席下の前輪配置に水冷4ストローク縦置きエンジン」という構成が、その後登場してくるワンボックスカーにおける一般的なスタイルとなっていきます。

1970年代以降のワンボックスカー

1970年代に入ると、この頃からワンボックスカーという呼び名が広く浸透するようになりました。

より大々的に売り出すにあたり、必要だったのは商用車から乗用車へのイメージの転換です。ワンボックスカーとして初期に誕生したコンマースも商用車としての発売でした。しかし商用車といえば、どうしても荷運び用の車種という感が否めません。そこでそんな印象を払拭し、新たな枠の家族車としてイメージアップを図るべく、自動車メーカー自身によって打ち出されたのがワンボックスカーという呼称だったのです。

この呼称が一般的になったことにより、乗用車タイプの車種に加え、キャブオーバースタイルのライトバンなどもワンボックスカーと呼ばれるようになっていきました。

こうした動きの中でワンボックスカーの市場性が認知されるようになっていくと、特に乗用車市場では商品性の改良にますます磨きがかかっていくことになりました。外装へのメタリックカラーの使用、精彩緻密なサンルーフの追加など、内外装の高級化が進んでいきます。さらに客室内の工夫においては、回転対座シートなどのギミックじみた仕様のものが登場するなど、ワンボックスカー市場の競争はさらに激しさを増すことになっていきます。

ワンボックスカーは、こうした独特ともいえる進化を遂げながら一世を風靡していきました。

軽自動車にもワンボックスが増えてきた

その一方で、軽ワンボックスカーなどは、長年に渡り丈夫さと実用性を備えた商用車として望まれてきました。しかし1980年に富士重工業からサンバー4WDが発売されると、徐々にレジャーを始めとする多用途車としての需要が増加するようになります。

さらに翌1981年、ダイハツ工業がハイゼットバンを基盤として、レジャー向け乗用車としての要素を仕上げたハイゼット・アトレーの発売を機に、スズキ、三菱、ホンダなど数々の同業他社もその流れに倣い、ワンボックスカーはさらに賑わいを高めていくこととなります。

その後日本の普通車においては、一時期セミキャブオーバー化が盛んになるような流れが見られたものの、全体的な流れはミニバンへと移り変わっていきます。

ハンドル操作の安定性や乗り心地の良さに加え、開発・生産コストの低さといった魅力が背景にあるでしょう。キャブオーバーとして乗用登録されている車種は、現在では非常に少なくなっています。

現在におけるワンボックスカーとは

これまでワンボックスカーの歴史をお話ししてきましたが、実は現在、本来ワンボックスカーではない車種までワンボックスカーとして認識されていることがあります。

その代表的なものがミニバンです。エンジン室・客室・荷物室の3つの空間が1つの箱に収まっているのがワンボックスカーという定義を踏まえると、客室・荷物室とは別に独立したエンジン室を持つ車種…、例えばアルファードやエルグランドなどは、エンジン室を含む箱と客室、荷物室を含む箱の2つから構成されていることになるので、ワンボックスカーではなく、厳密に言えばツーボックスや1.5ボックスなどに分類されます。

しかし実際の外観を見てみると、なんとなく3つの空間が1つの箱に収まっているように見える。ということでワンボックスカーとして親しまれているのですね。同様にステップワゴンやノア&ヴォクシーといった車も、同じワンボックスカーとして認知されるようになってきました。

大ヒットしたエスティマの存在

特に1990年に登場したエスティマによって、ワンボックスカーとミニバンの区別はさらに曖昧になっていきます。

初代モデルのエスティマは、エンジン室が床下に位置しているワンボックスカー。天才タマゴの名で広まった丸みのあるフォルムは、2代目以降ツーボックスとなっても受け継がれました。

そのため、外観的にもワンボックスカーのような名残が残り、エスティマにおいては2代目以降もワンボックスカーとして親しまれたのです。

現在は生産終了となっているエスティマですが、やはり日本のミニバンを代表する車種であったこともあり、ワンボックスカー=ミニバンといったイメージ付けに影響したところは大きいでしょう。

このように、現在におけるワンボックスカーというのは、空間が1つの箱に収まっているかを厳密に区別したものではなく、外観的に1つの箱のように見える車種を指すことの方が多くなっているのです。