VVT-iはVTECと似て非なる可変バルブタイミング機構

VVT-iとは、燃費や出力を向上する技術が搭載されたエンジンの機構のことです。

トヨタ自動車株式会社が環境性能を向上するために開発したもので、Vバリアブル、Vバルブ、Tタイミング、iインテリジェンスの頭文字を取ってVVT-i。

吸気バルブの開閉タイミングを状況によって変えることで、燃費や出力を上げる機構がエンジン内にあります。詳しく見ていきましょう。

どうして燃費や出力が上がるの?

4サイクルのエンジンは、吸気→圧縮→爆発→排気を繰り返しています。

排気から吸気工程に移るとき、排気バルブが閉まる間際に吸気バルブを開けて、2つのバルブが同時に開いている状態を作ることで、空気の充填効率が上がります。このことをバルブオーバーラップと言います。

そこで、VVT-iは吸気側のカムシャフトの位相を連続可変的に変え、吸排気バルブオーバーラップ量を最適な状態に持ってくることで、効率が上がり燃費や出力が向上します。

VVT-iとはどんな機構なの?

タイミングベルトが掛かる側に、油圧で動くアクチュエーターが備わっています。それをECUから情報が送られた、オイルコントロールバルブによって制御され、最大40度位相します。カム角、クランク角、油温、エンジン負荷の情報を元に演算されています。

このアクチュエーターは最初、歯車型が採用されていましたが、構造も複雑で耐久性が乏しく、高い加工技術が求められ、コストも掛かるために一部車両のみで搭載されていました。その後は構造がシンプルで耐久性も高い、小型のベーン式に変わりました。

エンジン始動時や低回転時は、アクチュエーター作動条件の油圧が確保できないので、ロックピンで最遅角に固定されています。油圧が十分に確保できると、ロックピンが外れ制御が始まります。

それぞれ回転数や負荷に応じ、次のような制御が入り燃費や出力向上をしています。

低負荷時は、オーバーラップを小さくすることで排気ガスが吸気側に戻るのを防ぐ。

中負荷時は、オーバーラップを大きくして、排気ガスをシリンダー内に残留させ内部EGR量をあげ、ポンピングロスを減らす。

高負荷・低中回転時は、吸気バルブの閉じるタイミングを早くして、吸気がインテーク側に戻るのを防ぐ。

高負荷・高回転時は、回転数に応じて吸気バルブの閉まる時期を遅くして、体積効率を上げる。

VVT-iのバリエーション

初期の頃から技術が向上し、色々なバリエーションが登場します。

カムシャフトの位相型、位相プラス切換型、ノンスロットル型があり、それぞれに異なった特徴があります。搭載車と共にご紹介します。

VVT 位相型

VVT-iの前身とも言えるのがVVTです。

低回転、高回転で吸気側カムシャフトを30度位相させるシステムで、2段階の調整のみでした。1991年AE101型のカローラに搭載された、20バルブのスポーツツインカムエンジン4A-GEに初めて採用されました。

DUAL VVT-i 位相型

DUALの文字通り、吸気側だけでなく排気側のバルブ位相も変化させることで、さらに緻密なバルブタイミング制御を行い、高い燃焼効率を得る機構です。1998年アルテッツァRS200に搭載された、ヤマハ発動機開発の3S-GEに採用されました。

VVTL-i 位相プラス切換型

Lはリフトの頭文字で吸気側の位相制御に加え、吸排気バルブのリフト量と作動角を、低回転時と高回転時で2段階に変えて制御します。

6000rpmでカムが高回転用に切り換わり、低回転時のトルクと高回転時の最大出力が向上します。ホンダのVTECや三菱のMIVECと似たようなシステムで、切り換わる時にエンジン音の変化も楽しめます。1999年セリカや2001年カローラランクスの2ZZ-GE型エンジンに採用されましたが、環境規制やコスト面などの問題で生産中止となりました。

VVT-iE 位相型

Eはエレクトリックの頭文字で油圧から、電動モーターによる制御に変わりました。今まで弱点だった油圧の低い状態でも制御が入り、より精密な位置決めが可能で、レスポンスも飛躍的に向上しました。

ECUによる高度な演算が必要だったため、高級車から採用され、2006年レクサスLS460の1UR-FSE、2007年IS-Fの2UR-GEに搭載されました。その後コストを下げる開発がされ、2014年ヴィッツの1NR-FKEといった大衆車にも搭載されるようになりました。

VVT-iW 位相型

Wはワイドの頭文字で、作動角が40度だったのに対し75度まで位相できる構造になっています。ダウンサイジングターボのエンジンに採用され、よりオーバーラップを大きく取れることで、吸気の損失を低負荷時に軽減し燃費向上します。2014年レクサスNXの8AR-FTSに初導入されました。

バルブマチック ノンスロットル型

電子制御にて連続可変的に、吸排気バルブのリフト量を可変するシステムで、吸入空気量の調整をスロットルバルブとバルブリフト量で制御します。VVT-iと組み合わされ位相角、リフト量、作動角が連続可変的に変えることができ、ポンピングロスの軽減や燃焼効率を上げることで燃費や出力が向上します。2018年12代目カローラに搭載されています。

メリットとデメリット

バルブタイミングを適切に制御することで、高燃費高出力を実現し、一般的なエンジンに取り付けやすい構造をしていることが、メリットとして挙げられます。デメリットは油圧制御の場合、定期的なオイル交換などのメンテナンス費用、VVTの部品が高価で故障時の費用が嵩むといった点が挙げあられます。

故障するとどうなる?

症状としては、バルブタイミングが適切に制御されないのでアイドリングが不安定で、通常よりも高い回転数になっている、パワーが感じられない、エンジンチェックランプが点灯している、負荷を掛けると通常感じられない振動がエンジンからする、といった症状が見られたらVVT機構の故障を疑います。

故障しないために

油圧制御されているものに関しては、エンジンオイルで作動しているため、オイル劣化や量が不足していると、作動しないばかりかVVTの機構を壊し、最悪エンジンブローしてしまう場合もあります。適切な時期にオイル交換、専門店での定期的な点検をお勧めします。

VVT-iとVTECの違い

同じ可変バルブタイミング機構ですが、VVT-iはカムシャフトの位相を可変的に変えリフト量は制御しないのに対し、VTECはバルブリフト量を低回転、高回転用のカムで変え位相は制御しません。よく混同されますが異なるシステムです。

VVTL-iがVTECに似ていて、位相制御に加えバルブリフト量も制御しますが、カムシャフトにある低、高回転用カムの数が異なります。VVTL-iがそれぞれ1個ずつ、VTECは低回転2個、高回転1個となります。

他社の可変バルブタイミング機構

トヨタ以外でも可変バルブタイミング機構があり、違う名称で販売されています。

・位相型
日産 NVCS
ダイハツ DVVT
マツダ SV-T
BMW VANOS
ポルシェ バリオカム

・切換型
ホンダ VTEC
三菱 MIVEC
アウディ AVS

・ノンスロットル型
BMW バルブトロニック
日産 VVEL

最新のvvt-iは?

トヨタの最新車種では排気側VVT-i、吸気側VVT-iEを採用することで、より緻密で繊細なバルブ制御をしています。より小さな排気量でも出力が出せ、環境性能が高いです。

今後も色々な新技術が搭載された、vvt-iが誕生してくることでしょう。